「2wayカーディガン」は、2013年から作り続けているSTAMP AND DIARYの定番。 カーディガンとしてはもちろん、ボタンをすべて留めて背中側にまわせばワイドシルエットのプルオーバーとしても着られます。そのままで様になるのはもちろん、インナーにブラウスを着て袖口を少し見せるというこなれた着方も楽しめる、絶妙なバランスのカーディガンです。
どんな人にも似合うカーディガン
当初はクルーネックで、うしろにボタンが付いたデザインの、素肌に1枚で着られるニットを作ろうと考えていました。でも、ファーストサンプルが、前身ごろと後ろ身ごろの接合部分がちょうど肩のラインと合うデザインに仕上がっているのを見て、ボタン側を前にしても着られる「2wayカーディガン」にするイメージがわいたのです。
写真上:身幅のあるボックスシルエットながら、落ち感のある生地を選んでいるため、女性らしさを感じる〈1〉 写真下:ボタン側をうしろにして着るとプルオーバーのように着られる〈2〉
このカーディガンはワンサイズの展開です。というのも、ひとつのサイズでいろんな体型の人が着られるデザインになっているから。たとえば、袖は肩を落としたオフショルダーのデザインで、丈も7〜8分と短め。どんな肩幅の人でも肩の位置を着にせずに着られる上、小柄な人や華奢な人は袖が8分丈になり、大柄な人や少し肩が張っている人なら袖が7分丈くらいになります。
デザイン面では、女性を美しく見せる工夫をしています。身幅はゆとりをもたせたボックスシルエットですが、落ち感のある素材を組み合わせたり、袖を7〜8分丈にして手首を見せることで、華奢な印象にしたり。首元は少しだけボートネックにして、首まわりや肩のラインがきれいに見えるように配慮しました。ちなみに、春、夏、秋冬とシーズンごとに異なる3種の素材を展開しているのですが、素材によって落ち感が異なるので、それぞれ微妙に身丈を変えています。そのくらい、シルエットやサイジングにこだわっています。
実は、このカーディガンはフランスで見たトドラー(子ども服)がイメージのもと。出来上がってみると、トドラーのような幼さはなく、大人の女性に似合う1着になりました。
秋冬はカシミアのようになめらかでやわらかいウール
もこもことしたボリュームのあるローゲージニットももちろんかわいいのですが、STAMP AND DIARYでは、ハイゲージニットこそ「暮らしの道具」であると思っています。パンツやスカート、どんなボトムにも合わせやすく、日常着としてはもちろん、きちんとした印象があるためオフィスなどでも着ることができます。また軽く、折りたたむとコンパクトになるので、バッグに入れておけば肌寒い時にさっと羽織ることもできて、とても便利なんです。
「2wayカーディガン」は、中国にあるイタリアの紡績技術をもった工場で作った、梳毛(そもう)と紡毛(ぼうもう)の中間の“セミ梳毛”という糸を使っています。毛足が長い羊毛を引きそろえて紡績し、強めに撚った「梳毛」、毛足の短い羊毛を繊維をそろえず、甘く撚った「紡毛」。ふたつのいいところを合わせた“セミ梳毛”は、カシミアのようなしっとりとした滑らかな質感と上品な光沢感をもちながら、ふっくらと温かいので、秋口から春先にかけてロングシーズンで活躍します。
バイヤーさんには「これだけ高品質なニットをなぜこの価格で提供できるのか」とよく聞かれます。2013年から作り続けているこのカーディガンは、おかげさまで毎シーズン、多くの方に手にとっていただいています。たくさん作れるということは、それだけ価格を抑えられるということでもありますし、「本当にいいものを、デイリーに着てもらいたい」というSTAMPSの思いに賛同してくれるニッターさんたちの協力も欠かせません。
STAMPSでも、検品やちょっとした手直しは社内で行うなど、少しでも価格を抑えられるよう努めています。秋冬とは別に、春はイタリアのソフトなコットン、夏はスイスの涼しいコットンを使用したカーディガンを展開しています。それについては、またの機会に。
- PHOTO:
- 三浦伸一(TOP、1〜6)
- TEXT:
- 古山京子(HELLO, FINE DAY!)