Travelogue

STAMPSの旅の記録

| Owen Barry |

イギリスの暮らしと羊

イギリスで最も歴史のあるシープスキンファクトリー、Owen Barry。
彼らの真摯なものづくりを知りたくて、旅に出ました。

12月に入ると、ぐっと寒さが増します。厚手のアウターを出したり、手袋やストールを探したり、本格的な冬支度です。また、家で過ごす時間が自然と長くなる方もいらっしゃると思います。STAMPSでは今年から、そんな季節にぴったりな、シープスキンのアイテムを展開する「Owen Barry(オーエンバリー)」の取り扱いをスタートしました。

保温性や通気性に優れるだけでなく、なめらかな手触りと自然で美しい毛艶をもつシープスキン。Owen Barryはこのシープスキンの特性を生かし、コートやバッグなどの服飾雑貨や、ラグやクッションといったインテリアアイテムを展開しています。今回は、Owen Barryのものづくりとシープスキンの魅力についてご紹介していきます。Owen Barryが生まれるイギリスへ、「ものえらびの旅」のはじまりです。

イギリスの暮らしで親しまれる羊

Owen Barryのファクトリーがあるのは、イギリスの南西部にあるサマセット。ロンドンからGreat Western Railwayに乗って2時間ほどの場所で、ブリストルやバースの南側に位置しています。最寄り駅を降りると、一面が田園地帯。いわゆるカントリーサイドと呼ばれるのどかな町です。Owen Barryのファクトリーへ向かうまでの車窓から青々と茂る牧草地に放牧された羊たちがもくもくと草を食べる姿を目にしました。イギリスでは「この町では、人口よりも羊の数のほうが多いんだよ」なんてジョークがかわされますが、まるで本当のことのように感じるほどです。

私たち日本人にはなかなか想像しにくいのですが、昔から羊はイギリス人の暮らしに欠かせない存在。スーパーでは羊の肉がごく普通に陳列されていて、私たちが牛肉や豚肉を使ったメニューを日常的に食べるように、イギリスの食卓にはラム肉やマトンが並びます。

また、イギリスは「夏でも寒い」という地域がある国。ふっくらとした毛並みをもつシープスキンはあたたかく、古くからジャケットやコート、手袋などの防寒着として、また、ラグやシートパッド、クッションなどのインテリアアイテムとして活用されてきました。羊はイギリス人の衣食住に寄り添う存在であることが分かります。

200年余り受け継がれるDNA

Owen Barryのファクトリーでは、5代目として活躍するシンディ・バーンスタブルさんやお嬢さんのチャスさんはじめ、デザイナー、職人のみなさんが誇りをもっていきいきと働いています。彼らのものづくりに対する深い信念が分かるエピソードがあります。

イギリス・サマセットにあるOwen Barryのファクトリーでは、20名ほどのスタッフたちがいきいきと働く

Owen Barryの歴史は、今から200年以上前、ウォルター・バリーとその妻、エイミーが始めた小さなタンナー(革なめし工場)から始まりました。それから3代にわたり、彼らの技術は脈々と受け継がれ、イギリス最古のシープスキンファクトリーとしてその名が広まっていったのです。

Owen Barryの起源は、1800年に夫妻で創業した小さなタンナー。そこから現在に至るまで5世代にわたり、シープスキンに関わる事業を家族で営んでいる

しかし、4代目のオーエン・バリーがタンナーを受け継いだ時、世界は列強同士が争い、第二次世界大戦へと向かう最中でした。職人たちが手間暇かけて丁寧に仕上げた上質な革。残念ながら、当時そうした貴重な資源は、軍需産業に使われざるをえませんでした。オーエンはその事実に大きな衝撃を受けます。

暮らしに役立つものづくりを

「人々が暮らしの中で使うものを作りたい」。そんな思いから、彼はどのように使われるかがわからない素材づくりを一切やめることを決意します。そして、1948年に信頼できるタナリーから仕入れた革を、一般の人たちが使えるプロダクトに加工・縫製する工房として、Owen Barryは誕生しました。

レザーの裁断と加工を学ぶため、手袋職人のエドウィン・ロビンスのもとで修行していたオーエンは、レザーグローブづくりからスタート。レザーグローブは、手に直接触れるものなだけに、素材選びや加工がつけ心地に大きく影響します。

Owen Barryの職人たちは、長く働いている人が多い。彼らが作るレザーアイテムは高品質なことで評価されているため、著名なブランドや高級デパートとのコラボレショーンも数多く手掛ける

彼は、部位や左右のバランスを考慮した素材選びや裁ちばさみの使い方など、そこで学んだ技術と経験を生かしたレザーグローブづくりを行い、徐々にこの技術をほかのアイテムへと応用。製造工程が複雑なジャケットを完璧に仕上げるまでに発展させます。その評判は広まり、現在では、イギリス国内外の名だたるブランドや高級デパートから高い信頼と評価を得るまでに成長しました。

経年変化を楽しむ、エシカルな素材

Owen Barryの革は、食肉を加工した際に余ったものだけを使用しています。近年、レザーやファーの是非についてはさまざまな議論がありますが、環境に対する意識が高いヨーロッパでは、化学繊維を使用した「エコファー」よりも、こうした食用由来の素材がポジティブに受け止められています。

なかでもシープスキンは、毛皮をとるためだけに飼われるミンクやフォックスなどとは異なり、本来捨てられてしまうものを無駄なく、大切に使うという意味でも環境への負荷が低い素材として認識されています。特に、エシカルな暮らしへ関心をもつ人たちから、再び注目されています。

写真左:寒い地域ならではのあたたかいインテリアアイテムも充実。ふわふわのシープスキンにくるんだ湯たんぽはお部屋でのリラックスタイムに〈1〉 写真右:もこもこのテクスチュアが可愛らしい巾着バッグ<BYWELL>。STAMPSではモダンなデザインの服飾雑貨を展開〈2〉

また、革の仕入れ先であるタナリーの選定は、高品質な素材を加工する技術をもつだけでなく、そこで働く人々や環境へ十分配慮しているか、を評価。自分たちの目が行き届くものづくりを目指し、定期的に訪問することで、徹底した管理を行っているのです。

シープスキンは使うほどに体になじみ、味わいを増していくもの。長く愛用できるという点では、環境への負担が少ない素材です。Owen Barryのアイテムが、「使い続ける楽しさ」「育てる楽しさ」を知るきっかけになればうれしいです。

PHOTO:
矢郷 桃(TOP,1,2)
TEXT:
古山京子(HELLO, FINE DAY!)

Travelogue CHAPTER04_Owen Barry

イギリスの暮らしと羊