「BEAUMONT ORGANIC(ボーモント オーガニック)」は、2008年、サッカーや音楽、芸術の街として知られるイギリス・マンチェスターで創業したエシカルブランド。イギリス人デザイナーのHannah Beaumont(ハンナ・ボーモント)が、100%オーガニックコットンで作ったTシャツ5型からスタートしました。
少しひねりの効いたシルエットとモダンなスタイルが特徴ですが、生地や資源、生産工程をもっとも重視して、ただ美しいだけではないものづくりを行っています。今日は、ハンナのものづくりとSTAMPSとの取り組みについて、お話したいと思います。
地球にも人にもやさしいものづくり
リーズ大学でファッションとテキスタイルを学んだハンナは、2003年に卒業後、ロンドンの一流ブランドで働き始めます。同時に、自身でも服を作って販売。それが評判を呼びました。
当初、大きなビジネスにしようとは思っていませんでしたが、農家が安い賃金しか受け取れなかったり、子どもが働いていたりという綿花栽培の現実を目の当たりにしたことで、「美しく、かつ環境に配慮したもの、社会に貢献できるものを作りたい」という思いが芽生え、「BEAUMONT ORGANIC」を立ち上げました。
「BEAUMONT ORGANIC(ボーモント オーガニック)」のデザイナー、Hannah Beaumont(ハンナ・ボーモント)。マンチェスターにある趣のある建物をリノベーションした住まいに、夫と愛犬とともに暮らしている
コレクションの多くに用いられているのは、オーガニックコットン。ハンナは強い信念を持ってオーガニックコットンの研究を行っています。化学処理をしていない種から育て、雑草の除去を手作業で行う畑で作られていて、遺伝子組み換えなどの手を加えたり、地球環境を汚すことをしていない綿花のみの使用を徹底。
当然、すべてはトレーサビリティ(どんな人がどのように作っているかを追跡できること)を明確にしています。そうした彼女の真摯なものづくりが評価され、2008年にイギリスで開かれた、ナチュラルでオーガニックなものづくりを行うブランドやメーカーを表彰する「Natural and Organic Awards」で「Best Organic Textile Product」を受賞しました。
またボランティア活動にも積極的に取り組み、「BEAUMONT ORGANIC」の年間の利益の1%を、フィジーで3番目に大きく、自然豊かなタベウニ島にあるNiusawa Schoolに寄付しています。
学生時代にタベウニ島に住み、この学校で教鞭をとっていたハンナは、何不自由なく育った自身とは違い、貧しい環境で生きている子どもたちを見て驚くことが多かったといいます。15年以上たった今でも学校の生徒や先生とは親交があり、寄付は子どもたちの学費や通学のための費用、制服代などの助けになっています。
STAMPSでは、素材のよさと生産背景に惹かれたのとともに、ハンナのものづくりに共感し、2020年秋冬のコレクションから取り扱いを開始しました。「オーガニック」と「エシカル」を基軸としながら、シーズンによってリネンなどの布帛やウールを組み合わせたり、オーガニックコットンにはめずらしいきれいな色を使ったりと、ハンナの感性が生きた、ゆるやかなものづくりを行っているのも魅力です。
写真左:ハンナも愛用するヨガウエア。オーガニックコットン95%に、ポリウレタンで伸縮性を加えている 写真右:セットアップとして着ても、プレーンな形なので、ほかのウエアと組み合わせても
「BEAUMONT ORGANIC」が長く作り続けているのがヨガウエア。ハンナ自身がヨガをやるときに着たいものがなかったことから作り始めました。色は定番のベージュとブラックに、シーズンごとに新色が加わります。
2021年の春夏はローズピンク。ロングスリーブのトップスはゆったりしたリラックス感のあるシルエットで、ラウンジウエアにもおすすめです。パンツはサルエルタイプで、少し落として履くイメージ。広くとられたウエスト部分は締めつけがなく、ほどよくフィットします。どちらもソフトで軽い肌触りで、イギリスをはじめ、ヨーロッパではとても人気があります。
写真上:下着は「BEAUMONT ORGANIC」の定番アイテム。シームレスなうえ、肌に当たる組成表示のタグがなく、プリントなので、ストレスなく着用することができるのもポイント〈1〉 写真下:シンプルながら女性の体の美しさを際立たせるデザイン
同じく、下着も長く作っているアイテムのひとつです。肌に触れる下着は、もっとも素材やつくりにこだわりたいもの。「BEAUMONT ORGANIC」の下着は、やわらかなオーガニックコットンを使用していて、継ぎ目のないシームレスなつくりなので、快適な着心地。家で過ごすリラックスウェアとしても最適です。
シンプルなブラとハイウエストのショーツが定番の形。色はブラック、ベージュ、タンの3色。2020年秋冬はシックなブラウンとネイビーを展開しました。いずれもハンナらしい、ナチュラルながら洗練された色使いです。
現在、「BEAUMONT ORGANIC」はマンチェスターにアトリエ兼ショップを構えています。ショップは1店舗のみで、アトリエで働くスタッフは、企画、マーケティング、オンライン担当など10人ほど。商品は、ポルトガルの工場と協力して生産。一部のニットはイギリス国内で生産しています。常に、自分たちの目が行き届くものづくりを心がけています。卸先は主にヨーロッパで、デンマークやドイツなど、特に環境への意識が高い国で支持されています。
「utilité」とのコラボレーション
STAMPSでは、日本でも、もっとたくさんの方に手にとっていただきたいと考えて、2021年の春夏から、私たちのオリジナルブランド「uutilité(ユティリテ)」とのコラボレーションを始めることに。
今シーズンは、「utilité」で好評のビッグシルエットのカットソーを「BEAUMONT ORGANIC」のオーガニックコットンで製作。残留農薬がなく、化学薬品にさらされていない生地は体にもやさしくて、ふっくらとやわらかく、着心地も抜群。どこかあたたかみも感じられます。
写真左:「utilité」で人気のカットソーがオーガニックコットンに。色は定番人気のホワイト、グレー、ブラックの3色。ボトムはヨガウェアのパンツ「KACHINA」の新色、ローズピンク。2021年4月に入荷予定〈2〉 写真右:「BEAUMONT ORGANIC」のワンピース「LAVINAH」は、袖と裾にあしらわれたフリルがエレガントな印象。ウエストにベルトを通せるデザインで、シルエットの変化も楽しめる。オーガニックコットンをたっぷりと使用した、リラックス感のある着心地〈3〉
「BEAUMONT ORGANIC」にとって、ほかのブランドとのコラボレーションは初めての試み。今後も、シーズンごとに色やアイテムを変えながら続けていく予定です。
朝、起きたらヨガをして、ベジタリアン料理を作って食べて、とふだんから夫と愛犬とともにサスティナブルな暮らしを送るハンナ。手を動かすのが好きで、ステイホームをきっかけに編み物を始めたそう。これからもハンナの思いを大事にしながら、一緒に新しいものを生み出していけたらと思います。
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矢郷 桃(TOP,1,2)
三浦伸一(3)
- TEXT:
- 増田綾子(HELLO, FINE DAY!)