Travelogue

| WALLACE SEWELL |

大阪、京都、東京。
日本を旅して生まれたテキスタイル

2021年の冬、イギリスのデザインスタジオ、WALLACE SEWELLから
届いたコレクションは、日本が舞台。
この美しい織物の背景にあるストーリーをご紹介します。

早いもので、今年最後の月になりました。街がイルミネーションで輝きはじめると、今年もクリスマスがやってくるなぁ、とわくわくします。この時期、大切な人に、また、自分に贈るプレゼントを探しはじめる方も多いのではないでしょうか。STAMPSには、冬のギフトにぴったりな、WALLACE SEWELL(ウォレス アンド スウェル)のアイテムが、イギリスから届きました。

WALLACE SEWELLは、Harriet Wallace-Jones(ハリエット・ウォレス)とEmma Sewell(エマ・スウェル)によるデザインスタジオ。二人は、色とパターンを巧みに操り、唯一無二の美しい織物を生み出すテキスタイルデザイナーです。

上質で温かな素材が用いられていて、つけ心地もかろやか。複雑な幾何学パターン、洗練された色使いのマフラーやショールは、いつもの装いにプラスすればがらりと雰囲気が変わります。性別、世代を問わず、喜んでいただけるはず。

イメージソースは、日本の3都市をめぐる旅

やわらかなラムウール100%で編んだ「ウールスカーフ」は、幅が20cmとコンパクトなマフラーで、折りたたんでバッグに入れておくこともでき、WALLACE SEWELLでも人気のアイテムです。2021年に展開するのは、なんと日本がモチーフ。彼女たちの“日本の旅”から生まれたものなのです。 

イメージソースは、2017年に彼女らが来日した際にめぐった、大阪、京都、東京の3都市。今日は、ハリエットとエマが記録した貴重な写真やスケッチをご紹介しながら、その足跡をたどっていきたいと思います。

OSAKA

「LAMBSWOOL SCARVES」の「OSAKA」。右から「MINT」、「BLUE」、「BLACK」

「OSAKA」は、大阪の魚市場で目にした光景がイメージソースとなっています。積み上げられたダンボールやプラスチックコンテナの褪せた色、輪郭のはっきりしたかたち。彼女たちは、魚市場ならではの造形とカラーパレットを見つけ、デザインに落とし込みました。

ハリエットとエマが記録した写真とスケッチから。大阪で訪れた魚市場では、独特のカラーリングが目にとまったという〈*〉

ボックスを積み重ねたようにも、太さの異なるボーダーをあしらったようにも見える幾何学のデザインで、カラーは、鮮やかな色使いにニュアンスカラーを添えた「MINT」と「BLUE」、ワインレッドを基調としたシックな「BLACK」。いずれも力強く、身につけているだけで元気になりそうです。

写真左は「BLUE」、右は「MINT」。「OSAKA」は、大胆なパターンとは鮮やかなカラーリングが印象的

KYOTO

「LAMBSWOOL SCARVES」の「KYOTO」は、日本の伝統色に通ずる繊細なカラーリング。右から「YELLOW」、「PINK」、「RED」

「KYOTO」は、寺院や町家などの美しい装飾、木彫りの陰影、長い年月を経た木造建築、寺社特有の色合いがイメージソースとなっています。織りのなかの格子を思わせる縞模様、美しいグラデーションは、歴史ある町並みを想像させます。

ハリエットとエマが記録した写真から。京都では、歴史ある町並みや木造建築の趣が印象的だったという〈*〉

ペールトーンをベースに、鮮やかな反対色を差し色とした「YELLOW」と「PINK」は、着物の色合わせに通ずるものが。また、「RED」は朱塗りの社殿や鳥居を思わせます。WALLACE SEWELLらしい、はっとするような色使いの中にも、日本の伝統色を想起させる繊細さや凛とした空気を感じとることができるのではないでしょうか。

写真上は「YELLOW」、下は「RED」。落ち着きのある雰囲気で、性別を問わず、幅広い年齢の方におすすめ

TOKYO

全面にいくつものパターンをあしらった「LAMBSWOOL SCARVES」の「TOKYO」。手前から「MONO」、「MEDLEY」

「TOKYO」は、東京の高層ビルから見た “roof scape” や素晴らしい建築を描きました。群れをなすようにひしめき合うビル、街の中にあるさまざまな色がガラスのカーテンウォールに映り込み、ニュートラルな色に変わる……。

ハリエットとエマが記録した写真とスケッチから。東京で見たビルが屹立する姿、幾重にも色が重なる街がイメージソースとなっている〈*〉

そんな、エキサイティングでせわしない“今の東京”を表現したのが、モノトーンを基本にグレイッシュカラーで構成した「MONO」、赤やグリーン、ブルーなど色の対比が楽しい「MEDLEY」です。いくつものパターンと色を複雑にミックスしたモダンな佇まいとなっています。

「TOKYO」の「MEDLEY」。これだけの色と柄を複雑に組み合わせ、調和させるのがWALLACE SEWELLの真骨頂だ

彼女たちの目がとらえ、感じとった日本の姿。これまで私たちが気づかなかった日本の魅力を再発見できるのはないでしょうか。

コーディネートに“ルーブル美術館の絵画”を添えて

2021年は、WALLACE SEWELLの新作がもうひとつあります。それがこの「ティペット」で、ウールとカシミヤの細い糸を使って織り上げた、ハンカチーフのようにコンパクトな大きさのマフラーです。ふんわりとした肌当たりが抜群に気持ちよく、薄手で軽いのにしっかりとあたたかいのが特徴です。

WALLACE SEWELL2021年の新作「WOOL AND CASHMERE TIPPETS」。右から「FRANS BROWN」、「FRANS RED」、「FRANS BLUE」。サイズは幅20cmx長さ92cmで、ウールとカシミヤの上質な細い糸で織り上げた、ふんわりと軽いつけ心地が特徴

彼女たちはデザインワークにおいて、アートからインスピレーションを受けることも多いのですが、実はこのティペットもそのひとつ。ルーブル美術館で見た絵画がイメージソースとなっているんです。

「FRANS BLUE」は、ジャン・フランソワ・ド・トロワの宗教画にある、目を奪われるようなブルーを表現。人物がまとうガウンの光沢を帯びたブルーに、紅潮した肌のローズ色、落ち着いたグリーンなどが合わせられています。

「FRANS BROWN」は、アントワーヌ・ベルジョンの静物画の見事な色の調和をイメージ。そこに、ボッティチェリが描いた聖母子像に見られる有機的な色彩を合わせています。

「FRANS RED」は、ルーブル美術館に所蔵されている絵画の多くに見られる、鮮やかな赤を基調として、ターコイズブルーと深くダークなメタリックトーンを合わせました。

「FRANS BLUE」(写真左)は、品のあるブルーが特徴。「FRANS BROWN」(写真右)はコーディネートに取り入れやすい落ち着きのあるカラーリング。織機の設定上、横糸は8色までしか使用できないため、経糸に約17色もの糸を使用してデザインを作り上げている

ティペットはあまりなじみのないアイテムかもしれませんが、ブラウスやニットにアクセサリーやスカーフを合わせる感覚で、コーディネートを楽しんでいただければと思います。女性はもちろん、男性にもおすすめで、カジュアルなスタイルだけでなく、シャツやジャケットなどフォーマルな装いにも合いますよ。

WALLACE SEWELLが生み出す織物はどれも、ストーリーがあります。贈った方との会話も、きっと弾むはずです。

本日ご紹介したアイテムは、ほぼ日ストアでお取り扱いいただいているほか、ジェイアール京都伊勢丹で開催の「冬のおくりもの」展、松屋銀座で開催の「冬を楽しむ贈り物 STAMP AND DIARY HOME STORE」でもご用意しております。ぜひ、ご覧くださいませ。

PHOTO:
三浦伸一(*以外)
EDIT&TEXT:
古山京子(Hi inc.)

ほぼ日ストア「英国から来た羊と織物。」

https://www.1101.com/store/uk/2021aw/index.html


「冬のおくりもの」@ジェイアール京都伊勢丹
会期:2021年12月1日(水)~12月7日(火)
場所:ジェイアール京都伊勢丹5階
営業時間 :10:00〜20:00
https://www.mistore.jp/store/kyoto.html


冬を楽しむ贈り物 STAMP AND DIARY HOME STORE@松屋銀座
会期:2021年12月8日(水)〜12月14日(火)
場所:松屋銀座7階 デザインギャラリー1953
営業時間 :10:00〜20:00(最終日は18:00閉場)
https://www.matsuya.com/ginza/

Travelogue CHAPTER05_WALLACE SEWELL

大阪、京都、東京。
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