スタンプスが輸入代理店を務めるイギリスのシープスキンブランド、Owen Barry(オーエンバリー)が、帽子ブランドのmature ha.(マチュアーハ)と初のコラボレーションを果たしました。現在、STAMP AND DIARY HOME STORE広島店を中心に実店舗で発売中です。
帽子をかぶる楽しさを教えてくれる人気の帽子ブランド、mature ha.が提案するのは、Owen Barryの上質なシープスキンを全面に使用した“オール・シープスキン”の帽子。この贅沢なコラボレーションについて、代表の吉川がmature ha.の高田雅之さんと高田ユキさんにお話を伺いました。
帽子ブランド、mature ha.を主宰する高田雅之さん(写真左)とコラボレートした帽子について話す、代表の吉川(写真右)〈*〉
Owen Barryから初の帽子が登場
–––今回のコラボレーションのきっかけを教えてください。
吉川修一(以下、吉川) mature ha.の帽子は広島店を中心に、STAMP AND DIARY HOME STOREの各店で取り扱わせていただいていますが、コラボレーションは今回が初めて。2020年の冬、おふたりが代官山のアトリエにお越しくださる機会があったのですが、そのときにmature ha.とOwen Barryでコラボレートできないかと、僕から提案させていただきました。
Owen Barryは、スタンプスが日本の代理店業務を引き継いでからは、ラグやクッションといったインテリアアイテムや、バッグやグローブなどの服飾小物などを展開してきましたが、帽子はラインナップにありませんでした。
mature ha.は日本だけでなく、ヨーロッパやアジアを中心に世界中にファンがいる帽子ブランドです。Owen Barryは世界の名だたるファッションブランドや老舗デパートのOEMも請け負って、腕が鍛え上げられてきているので、mature ha.のエッセンスがOwen Barryに入り込んで、どんな化学反応を起こすのか、すごく興味があって。
–––mature ha.がシープスキンを使って帽子を作るのは初めてと伺いました。シープスキンという素材の印象はいかがですか?
高田ユキ(以下、ユキ) レザーというとハリがあって、カチッとしたイメージだったのですが、シープスキンの柔らかさにとても驚きました。かぶるうちにどんどんその人に馴染んでいきそうだと思いました。
写真左:mature ha.とOwen Barryが初めてコラボレートした、全面シープスキンのあたたかなボアキャップ。内側がボアになっているので、抜群のあたたかさ 写真右:「mature ha.」のデザイナーである高田ユキさん。今回は、展示会の会期中にお話を伺った〈*〉
吉川 シープスキンを扱ううえで、むずかしかった点はありますか?
ユキ シープスキンはふわふわのボアが魅力ですよね。その一方で、厚みが予測できないところがあって、サイズの調整がむずかしかったです。
吉川 天然のものなので、厚みがそろいにくいという点はありますね。
高田雅之(以下、雅之) Owen Barryが帽子を専門に作るファクトリーではないという点でいえば、パターンや縫製の始末をこっちに変えた方がいいんじゃないか、などというやりとりもありました。
ユキ コロナ禍でイギリスにあるOwen Barryのファクトリーへ行くことができなかったので、さらにむずかしかったように感じています。調整したい箇所があったとき、まずは「なぜ?」を理解してもらうことが大事だと思っているので。会って直接話した方がやっぱりニュアンスが伝わるんですよね。
雅之 でも、上がってきたサンプルを見て、本当に手が慣れていらっしゃるなと感心しました。実は当初、超えなくちゃいけないハードルがたくさんありそうだと心配していたんです。結果的には、しっかりとゴールに行き着いた。そこは、やはりOwen Barryの経験値のなせる技なんだと感じました。
吉川 彼らの知識と技術は目を見張るものがありますが、帽子を専門に作っていたわけではなかったので、おふたりにとってはご苦労も多かったのではと思います。
着こなしに抜け感をプラス。ペールトーンのボアキャップ
「Hood Cap」はグレー(左)とベージュ(右)の2色展開。抜け感を与える明るいトーンは、ダークな色合いが増えがちな冬の装いにプラスしたい〈*〉
ーーこちらの「Hood Cap」は、mature ha.で人気の「Hood Cap」を思い起こさせるデザインですね。
ユキ はい。デザインとしては、mature ha.の「Hood Cap」をベースにしています。シープスキンは私たちが初めて扱う素材でしたし、コロナ禍でファクトリーに伺って職人さんと直接やりとりをするのが難しかったこともあり、自分たちの予測のたつ範囲で形にしようと考えました。
吉川 「Hood Cap」は、mature ha.の冬の定番といえる帽子ですよね。表側がニット生地、内側がボア生地になっていて、折り返して少しボアを見せるデザインで。頭全体がボアで包み込まれるので、すごくあたたかい。
ユキ 「Hood Cap」は、2016年から毎年展開しているデザインです。mature ha.では、ウールやオーガニックコットン、アルパカなどで製作していますが、今回は贅沢にシープスキンを全面に使うことにしました。
吉川 シープスキンは、毛足を短くカットしてカールさせたものを選ばれていますね。毛の面と皮の面を両方使うダブルフェースで、皮面をナッパラン(樹脂加工によりレザーの銀面のように仕上げる)にして。
「Hood Cap」は、毛足を短くカットしてカールさせたシープスキンを用いているため、カジュアルな装いにも合う。外側は、やや艶を帯びた質感のナッパラン仕上げに
ユキ 当初はスエードを考えていたのですが、サンプルがナッパランで仕上がってきて、その風合いがすごく良かったのでそのまま進行することにしました。
吉川 カラーは、ライトベージュとライトグレーの2色。明るいトーンの帽子は、コーディネートに抜け感を出してくれそうですね。
“ロシアキャップ”で、バランスのいい冬の装いに
「Russian Fur Cap」はベージュ(左)とブラウン(右)の2色展開。細くやわらかな毛が密なシープスキンが用いられており、外側はマットなテクスチュアのスエードでシックな雰囲気〈*〉
吉川 こちらの「Russian Fur Cap」は、肌当たりがやわらかで毛が密なシープスキンを使用したダブルフェースで、皮の面はスエードで仕上げられています。このデザインはどのようにアプローチされたのですか?
ユキ 折り返してファーを見せるというデザインは「Hood Cap」に近いのですが、mature ha.としては初めての形。名前のとおり、“ロシアキャップ”から想起しているんです。普段、帽子をデザインをするとき、こうした明快なアプローチはほとんどしないのですが(笑)
吉川 ヨーロッパでは、冬になるとロシアキャップをかぶる人が多いですよね。
ユキ そうですよね。よく見かけるのは、ふわふわのファーが表に全面あしらわれている帽子ですよね。もちろんそれもかわいいのですが、mature ha.は“自分になじんで毎日かぶれる帽子”を目指しているので、ファーを全面に使って華やかなイメージにするよりも、“ちょっと見せ”で、日常生活に違和感なく溶け込むデザインにしました。
雅之 全面レザーなんて贅沢な使い方をして、怒られてもおかしくないんじゃないかなと思ったのですが……(笑)
吉川 そんなことないですよ!(笑) レザーを全面に使うことは、おふたりにとって新たな試みだったと思いますが、しっかりと“mature ha.の顔”をもった帽子になったように思っています。こちらも2色展開。ベージュは肌なじみがよさそうですし、ブラウンはコーディネートをシックにまとめてくれそうですね。
ボアの帽子というと一見ハードルが高そうですが、ほどよいボリューム感が、重ね着したり、厚手のアウターを着る冬のファッションとバランスがとりやすい。何よりも今のシーズンの気分を高めてくれますよね。冬の着こなしにぜひプラスしてほしいアイテムです。
高田雅之さん・高田ユキさん 「帽子をあたりまえにかぶる生活を知ってほしい、楽しんでほしい」という想いから帽子ブランド「mature ha.」を立ち上げる。神戸を拠点に、かぶり心地や素材感にこだわった、日常を少し豊かにする「新しい帽子」を提案。無駄な装飾を省いたシンプルなデザインは自由度が高く、形を変えたり、複数のかぶり方ができるものが多い。帽子の楽しみを広げるデザインが世界中で愛されている。https://www.mature-kobe.com
- PHOTO:
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有賀 傑(*)
三浦伸一
- EDIT&TEXT:
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古山京子(Hi inc.)