Travelogue

STAMPSの旅の記録

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荒井昭久さん・博子さん〈後編〉

「dansko」の総輸入元である荒井さん夫妻。「現地の暮らしを知りたい」という二人が必ず行く場所とは? また、二人が旅を続ける理由とは?

アメリカのシューズブランド「dansko(以下、ダンスコ)」の輸入を行っている荒井昭久さん・博子さんご夫妻とSTAMPSのディレクター吉川が旅について語り合う「旅する人々」の後編。海が好きだというお二人に、最近の旅についてお話を伺いました。

前編はこちら

最近の旅先はもっぱら“海”

–––普段、旅先はどうやって決めていますか?

荒井博子さん(以下、博子) パンデミックの影響と、4年前に犬を迎えたこともあって、最近は犬も一緒に行ける海が多いです。

吉川 海では釣りやダイビングを主にされるんですか?

荒井昭久さん(以下、昭久) そう。パラオの僻地でシュノーケリングをしたとき、もっと深く潜ってみたいと思って、ダイビングをするようになったんです。それからうちの社員にもお金を出すからとダイビングの免許とってもらって、社員旅行でも2、3回、パラオに行きましたね。

吉川 パンデミック前、社員旅行は毎年行かれてたんですか?

昭久 5、6年は続いていたかな。うちの社員旅行は、誰彼構わず「来たけりゃ来る」ってなってるんです。だから社員以外の友人たちも来る。

吉川 旅したい人が集まってくるんですね、楽しそうだなぁ。

昭久 なかでも犬たちを連れていけるので、宮古島にはよく行きます。ポーチュギーズウォータードッグという漁師の手伝いをしていたポルトガルの犬だから、泳げるんです。一緒に海で泳げるかなと期待していたんですが、できなかったんですよ。犬が、泳いでる人を見ると、助けようと岸に連れ戻しちゃって(笑)

博子 「危ないから帰るぞ!」って、シリアスモードに入っちゃう。浮いてるものを見つけると拾ってくるし、近くを泳いでいた見知らぬ子どもも、岸に連れ戻したりしてる(笑)。でも、宮古島は東京から3時間の距離で、人も多くないから犬を連れてのびのびと散歩できますし、過ごしやすいですよ。

近年、荒井さん夫妻が愛犬とともに行くのが宮古島。ダイビングや釣り、散歩を楽しんでいる〈*〉

昭久 開放的な雰囲気だしね。そういえば、数年前に宮古島に行ったときは、何十年に一度という台風が来て、すごかった。3日間何もできなくて、電気も止まって。軽自動車が転がって行ったり、信号機が飛んでいっちゃったり。窓をしめて枠にガムテープを貼ってるのに隙間から雨が溢れてきて室内が水浸しになったり、朝起きて窓の外を見たら、まわりにあったサトウキビ畑が全部なぎ倒されていて、景色のいい部屋に変わってたり(笑)。超面白かった!

博子 ろうそくの火を囲んでみんなでごはん食べたりしたのは、楽しかったです。携帯電話の充電がなくなってからは、車まで何とか歩いて行って、ナビでニュースを見たり。

吉川 普通に聞けばトラブルなのに、お二人から聞くと、楽しかった思い出として聞こえます。

昭久 楽しい楽しい! 台風のとき、一緒に行った友人は予定を変更して先に帰ったんだけど、俺は台風を経験したいから残った。「風速50mを超えるなんて、どうなっちゃうの? 楽しみ!」って。

博子 まぁ、それは無事に帰ってきてるから言えることなんだけど(笑)。でも、ダイビングって生と死が紙一重みたいなところがあります。もぐっていると「これで上に上がれなかったら死ぬかもしれない」と頭をよぎる。だから精神的に強くなるというか、冷静さを自分で保つ練習になる。

昭久 そうそう、体力というより、精神的に強くなるよね。

〈*〉

その土地ならでは、を知りたい

–––お二人は、旅先で必ずすることはありますか?

博子 映画館と動物園、地元のスーパーには行くようにしています。

昭久 びっくりしたのが、オランダの映画館では途中休憩があったんですよ。「マトリックス」を観たんだけど、途中で止めて、みんなでバーみたいなところで15分ぐらい休憩するの。

博子 宮古島の映画館では、「これから○○という映画が始まります」「すごい長い映画なので先にトイレに行ってくださいね」と話す人が袖から出てきたり。面白いですよね。

吉川 そもそも、なぜ旅先で映画館に行くのですか?

昭久 地域性がわかるし、映画館独特の雰囲気が好きなんですよね。あとチャンスがあれば行くのが、夜の移動式遊園地。

アトラクションが面白いというより、雰囲気が好き。屋台とかもたくさんあって、衣を付けてその場で揚げてくれるアメリカンドッグがあったら、必ず食べます。ジェットコースターは、木で高さ調節してたりするから、乗るのはちょっと怖いんだけどね(笑)。

以前ハワイに行った際に訪れたという夜の移動式遊園地。ジェットコースターやアトラクションのほか、B級グルメやアーティストのステージなども楽しめるという〈*〉

吉川 動物園や水族館に行くのは、生き物を見るためですか?

博子 はい。国によって展示方法が違っているのが面白いですね。アメリカだと、動物にストレスを与えないように設計するから、動物があまりいない(笑)。

昭久 シアトルの水族館は、設計当時お金がなかったらしく、メインの水槽に錦鯉とかいたりするんですよ! あと俺、釣りが好きだから、その土地にどんな魚がいるのか知りたい。水族館の始めや終わりに「地元の水辺コーナー」みたいなのがあるでしょ? あの展示を見るのが好きですね。

吉川 スーパーに行くのは、地元の人が何を買っているか知るためですか?

昭久 そうそう。普段、何食べてんだろう、って。メキシコのスーパーには、5、6種類の塩が樽に入れられて、量り売りされてるの。それで、メキシコ人は塩にはうるさいことを知りました。

博子 それと、大きなプリンも量り売りされていて、衝撃でしたね。

昭久 メキシコのプリンは日本のに近いから好き。当時、アメリカはババロアみたいなプリンしかなかったので、プリン目的にメキシコのスーパーによく行きました。

–––特に印象に残っている食べ物はありますか?

昭久 すっごくまずかったものは覚えてる。一番衝撃を受けたのは、シアトルの韓国人がやっている日本食屋さんのカツ丼。ご飯の上に野菜炒めがあって、その上にとんかつが乗ってるんです。さらにその上に天津飯にかかっているようなケチャップで作った甘酸っぱい餡がかかってるの。それが俺の歴代一位「なんだろうこの料理」だったな(笑)。

博子 昔のアメリカって、そういうおかしいところがありましたね。私は、アメリカだったらフードトラックで売ってるメキシコ料理が大好き。メキシコで食べる味とはまた違う、アメリカのフードトラックならではの味みたいなのがあるんですよね。ある意味、アメリカらしい味だなって思いますね。

吉川 アメリカの食べ物って、元の国のものとは少し味が違ってて、その違いがアメリカらしさになってるんですよね。多国籍ならではの味ですよね。

もっと世界中を旅したい

–––まさに生きるように旅をされていますが、お二人にとって旅とは、どういうものなのでしょうか。

博子 旅をするのは、目線を広げたりアイデアを得るためですかね。アメリカに行ったからこそ、ダンスコのビジネスを始めることができた。ビジネスチャンスがあるっていうのは、日本にいたら得られない感覚だったなと思います。

アメリカに住んでる日本人は、独立してビジネスを始めたいと考える方も多いんです。レストランのウェイターでも、雇われてはいるけどチップは自分次第だったりして、個人の能力が評価される場がある。そんなふうに、起業する人やビジネスチャンスを狙ってる人が身近にいる環境はよかったなと思います。

吉川 お二人のお話を聞いていると、これからもいろいろな国へ行かれて体験をされて、自由に生きていかれる姿が目に浮かびます。

博子 行きたいところ、まだまだありますね。

昭久 人間は自由に生きていいんだから、動けるうちに動かないとな。

吉川 これから行きたいと思っているところはどこですか?

昭久 モンゴルで馬走らせたり、アマゾンで釣りをしてみたい。未知動物が好きだからネス湖も行ってみたいし、イギリスやフランスの田舎もいいなあ。もしお金と時間に余裕があったら、各国に2年ぐらいずつ住みたい。そうしたらなんとなくその国がわかると思う。

博子 2年がいいか、2カ月がいいか、今少しずつ作戦を練っています。このままずっと日本にいることはないかなと思いますね。

吉川 価値観が同じなのがすごくいい。これからも、お二人の旅は続いていくんですね。

荒井昭久さん・博子さんの旅の必需品

旅に持っていくダンスコの靴3足。(上から順に)海で遊ぶときは水に濡れても平気なスポーティーストラップサンダルの「RACQUEL(ラケル)」。普段使いとして使用する、スニーカー「PACE(ペイス)」。シンプルでトラディショナルなデザインのクロッグ「PROFESSIONAL BOX(プロフェッショナル ボックス)」は、飛行機の中や夜のお出かけに(写真左)

「Amazon」の「ファイヤースティック」は、映画好きな昭久さんの必需品。旅先でホテルのテレビにつないで、Amazon PrimeやYou Tubeなどを観ている(写真右)

旅先でほっと一息つきたいときに飲む緑茶。「海外でいい緑茶を見つけるのが難しいので、必ず持っていきます」(博子)。そのときに家にある茶葉を、軽い竹製の茶こしと共に。(写真上)

シュノーケリングに必須な道具ふたつ。フィンは「apollo」のもので、やや重めで、素人でも水中で泳ぎやすいように作られている。「このフィンをつけると誰よりも早く進んで行くのよ」(博子)。マスクは「GULL」のもので、水中でも目立つ白をセレクト(写真左)

愛犬と共に行く宮古島に必ず持っていく犬用のライフジャケット。アメリカのブランド、DOG DEPTのもので、迷彩柄と蛍光オレンジの組み合わせが目を引く。(写真右)

荒井昭久さん・博子さんが旅先で出会ったもの

どちらも宮古島で購入。右は琉球石灰石から作られたシーサーで、スタジオde-jinによるもの。左は宮古島に行くと必ず立ち寄る「ニンギン珈琲」の手廻し焙煎のコーヒー豆。「オーナーさんには宮古島のおいしいお店を紹介してもらったりと、親しくさせてもらっています」(昭久)(写真上)

アメリカで購入した犬のおやつやおもちゃは、愛犬家の友人へのお土産に。アメリカには、日本で見つけられないようなユニークなデザインやコンセプトのものが多いという。(写真左下)

アメリカで必ず購入するのが、石けんや歯磨き粉、サプリメント、薬。「特に石けんは日本から持っていかず、スーパーやドラッグストアで現地調達したものを使います」(博子さん)(写真右下)

吉川が選ぶ「旅に持って行ってほしいもの」

今回、吉川が荒井さんご夫妻のために選んだのは、「TAMPICO(タンピコ)」の白いトートバッグ。昭久さんには縦に長い台形のフォルムが特徴の「DINOSAURE」、博子さんには外側にポケットが付いた「GARDEN BAG」を。「お二人は“白”のイメージだったので、白で揃えてみました。このバッグは、黒いレザーのハンドルとパイピングが効いていて、シックな雰囲気でお似合いになると思います」(吉川)

対談を終えて

お二人は、僕の想像をはるかに超える経験をされていました。お話を伺っていると、まるで旅が日常で、普段の生活が非日常のような錯覚を覚えます。力まずに手ぶらでさらりと旅していそうなその姿は、「自由と刺激を求める旅のプロ」と言えそうです。何より、旅先でのトラブルや事件を楽しんでいる昭久さんと、それを落ち着いた表情で受け止める博子さんは、「永遠の少年とその彼女」のようで……。これからも、大切なワンちゃんと一緒に海を楽しんだり、いろんな国へ行かれたり、はたまた住んでみたりされるのではないかなと思うと、僕のほうまでワクワクしてきました。楽しい時間をありがとうございました!(吉川)

荒井昭久さん・博子さん 結婚後に渡米し、シアトルとポートランドに暮らしていた際、ペンシルベニア生まれのシューズブランド「dansko(ダンスコ)」に出会い、2008年にダンスコの日本総輸入を務めるシースターを設立。昭久さんは代表を務め、博子さんはブランドディレクターとして企画やプレス業務を担当する。http://www.dansko.jp

PHOTO:
有賀 傑(*以外)
*は荒井昭久さん・博子さんご提供
EDIT:
古山京子(Hi inc.)
TEXT:
野村慶子

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